2025/08/19
このブログでは、大部分のがんは、慢性炎症で発生する活性酸素種が遺伝子を変異させることによる、と述べてきた。この点について、日本の医者はどのように考えているのか、聞きたいと思うが、そのような機会はない。そこで、AI (Gemini) に質問することにした。
そこで、最初に上記の質問をした。以下に、その回答の概要を示す。
それは非常に重要な側面を捉えていますが、「大部分のがん」と一括りにするには少し単純化しすぎている可能性があります。より正確に言うと「慢性炎症とそれで発生する活性酸素は、多くのがんの発生と進行における中心的な要因の一つだが、それだけが遺伝子変異の唯一の直接原因ではない」となります。
慢性炎症と活性酸素の重要な役割
まず、ご指摘の通り、慢性炎症と活性酸素が遺伝子を直接変異させることは事実であり、極めて重要です。
* 直接的な遺伝子変異の誘発:
活性酸素はDNAを酸化させ、特徴的なG→T変異を引き起こします。これは、B型・C型肝炎ウイルスによる肝臓がんや、ピロリ菌感染による胃がんなど、特定の感染症に伴うがんで変異の主要な原因の一つと考えられています。
* がんの「促進因子(プロモーター)」としての役割:
これが非常に重要な点です。活性酸素は遺伝子を傷つけるだけでなく、がんが育ちやすい「土壌」を作り出します。
* 細胞分裂の加速: 慢性的な炎症は、組織を常に修復しようとするため、細胞分裂の頻度を上げます。細胞分裂が増えれば、後述する「複製のミス」が起こる確率も自然と高まります。
* がん細胞の生存を助ける: 炎症は、がん細胞の増殖や、栄養を運ぶ血管の新生(血管新生)を助ける物質を放出します。
他の主要な遺伝子変異の原因
大部分のがん(特に散発性がん)は、単一の原因ではなく、複数の要因が長年にわたって積み重なった結果です。活性酸素以外にも、以下の二つが大きな原因となります。
1)外来性の発がん物質(環境要因)
環境からの曝露が、特定のがんの主要な原因となります。
* 紫外線: 皮膚がんの最大の原因。DNAに特徴的な傷(ピリミジン二量体)を作り、C→T変異を引き起こします。
* タバコの煙: 肺がんの最大の原因。ニトロソアミンなどの化学物質が直接DNAを傷つけ、G→A変異などを引き起こします。もちろん、タバコは同時に強力な酸化ストレス源でもあります。
* 食事中の発がん物質: アフラトキシン(カビ毒)やニトロソアミンなども特定の変異を引き起こします。
2)正常な細胞活動に伴うエラー(内的要因)
これは、特定の病気や生活習慣がない人でも起こりうる、最も基本的な変異の原因です。
* DNA複製のミス: 人間の体は約37兆個の細胞からなり、日々分裂を繰り返しています。その際、DNAをコピーしますが、数億〜数十億塩基に1回程度の確率(ヒトのゲノム中の塩基対は約30億対)で「コピーミス」が起こります。人生を通じて行われる膨大な細胞分裂を考えると、この偶発的なミスが蓄積するだけでも、がんの原因となり得ます。これは「避けられない変異」とも言え、多くのがんの背景にあると考えられています。
結論
大部分のがんの遺伝子変異は、以下の3つの要因が複雑に絡み合った結果と考えるのが最も現実に近いです。
* 環境要因(紫外線、化学物質など)
* 内的要因(避けられないDNA複製のミスなど)
* 慢性炎症(活性酸素による直接的な変異誘発 + 他の要因による変異を加速させる「促進」作用)
したがって、「慢性炎症で発生する活性酸素」は、多くのがんにおいて非常に強力なプレーヤーであることは間違いありませんが、それだけで大部分のがんの遺伝子変異をすべて説明できるわけではなく、他の要因との組み合わせで考えることが重要です。
ここで、DNAの複製ミスが挙げられているので、それでは、ゾウやクジラはヒトより大きいのに、がんが少ないのはなぜか?と聞いたところ、以下の回答があった。
それは生物学における非常に鋭い指摘で、「ペトのパラドックス(Peto’s Paradox)」として知られる有名な謎です。理論上、体が大きく寿命が長い動物ほど細胞の数が多く、生涯に行われる細胞分裂の回数も増えるため、コピーミスによるがんの発生率は高くなるはずです。しかし、実際にはゾウやクジラのがん発生率はヒトと変わらないか、むしろ低いことが分かっています。このパラドックスを説明する鍵は、ゾウやクジラのような大型動物が、進化の過程で「より強力で洗練されたがん抑制の仕組み」を獲得したことにあります。
ゾウの解決策:「ゲノムの守護神」の数を増やす
ゾウのがん耐性メカニズムは、特に詳しく研究されています。その秘密は、”ゲノムの守護神”と呼ばれるがん抑制遺伝子TP53にありました。
* ヒトの場合: TP53遺伝子を1対(2コピー)しか持っていません。
* ゾウの場合: なんと20対(40コピー)ものTP53遺伝子を持っています。
TP53が作るp53タンパク質は、細胞のDNAに傷が見つかると、修復を試みるか、修復不可能なら細胞を自死(アポトーシス)させるかの重要な判断を下します。ゾウの細胞は、このp53タンパク質が大量にあるため、DNAに少しでも傷が見つかると、修復を試みるという中途半端な手段をとらず、非常に効率よく、かつ積極的にアポトーシスを選択します。つまり、「がんになる可能性のある細胞は、ごく初期段階で徹底的に排除する」という、極めて強力な品質管理システムを持っているのです。例えるなら、ヒトの細胞には1〜2人の警備員しかいないのに対し、ゾウの細胞には警備員が20人体制で常駐し、少しでも怪しい動きがあれば即座に対応するようなものです。
クジラの解決策:「DNA修理工場」の性能を高める
一方で、シロナガスクジラや200年以上生きるホッキョククジラなどは、ゾウのようにTP53の数を増やす戦略だけではありません。
彼らのゲノムを解析した研究では、以下のような特徴が見つかっています。
* DNA修復遺伝子の進化: DNAの傷を修復する能力に関わる遺伝子(例えばERCC1など)が、他の哺乳類よりも高性能に進化している。
* 細胞周期をコントロールする遺伝子の進化: 細胞分裂の速度を適切にコントロールし、異常な細胞の増殖を防ぐ仕組みが強化されている。
つまり、クジラは「傷ついた細胞をすぐに殺す」ゾウの戦略とは少し異なり、「そもそも傷がつきにくい、あるいは傷ついても完璧に修理する」という、高性能なDNA維持・修復システムを発達させたと考えられています。
結論:進化の必然
体が大きくなり、寿命が延びるという進化の過程で、がんは極めて大きな障壁となります。そのため、ゾウやクジラは、コピーミスという避けられないリスクに対抗するため、それぞれ独自の方法で「がんを抑制する能力」を飛躍的に高める必要がありました。
ペトのパラドックスは、生物の進化がいかに巧妙にがんという病気を克服してきたかを示す、非常に興味深い実例なのです。
あくまで、コピーミス説にこだわっているので、それでは、野菜の動物にがんが少ないのは、どのように考えるか?と聞いたところ、以下の回答であった。
「野生動物には、ほとんどがんが見つからない」という点は、半分正しく、半分は誤解を含んでいます。彼らとヒトとの違いは、過酷な自然環境と現代人が作り出した特殊な環境の差に集約されます。
「がんにならない」のではなく「がんで死ぬ前にいなくなる」
まず大前提として、野生動物もがんにかかります。しかし、それらが私たちの目にとまりにくい、また実際にがんが進行する前に死んでしまう理由があります。
* 自然淘汰の現実: 野生では、がんにかかって少しでも体力が落ちたり、動きが鈍くなったりした個体は、すぐに捕食者に狙われたり、エサを獲れずに餓死したりします。病気が進行する前に、自然界から淘汰されてしまうのです。人間のように、がんと診断されてから何年も治療を続けるという状況はありえません。
* 短い寿命: がんは基本的に「老化の病気」であり、年齢とともに遺伝子のコピーミスが蓄積することで発生リスクが高まります。多くの野生動物は、捕食、飢餓、事故、感染症などによって、がんが問題になるような高齢に達する前に死んでしまいます。
* 観察の困難さ: 広大な自然の中にいる動物の健康状態を、私たちが常に監視しているわけではありません。死骸が見つかっても、その死因ががんであったかを調べる機会はほとんどありません。
最初の質問に対する回答のうち、「コピーミス説」の説明は、少し苦しい。苦しくても、AI は平然と回答するのが、面白い。コピーミス説では、がん細胞あたり1万箇所の変異を説明できない、なぜ慢性炎症の起きる部位でがんが発生するのか説明できない、慢性炎症の部位で細胞分裂が増加することもコピーミスの原因としている、などの理由で、明らかな間違いである。AI が引用するのは、過去にそのような議論があったためである。最初の回答のうち、「コピーミス説」を除くと、環境化学物質についての指摘は妥当である。紫外線による皮膚がん、タバコによるニトロソアミン(:この問題については、このブログ「ニトロソアミンか活性酸素種か」参照)、アフラトキシンについては、「大部分のがん」には含めていないので、了解できる。タバコやアフラトキシンは、いわば猛毒を食べているようなものであるから、がんになって当然である。すると、最初の回答で残るのは、慢性炎症で発生する活性酸素種が遺伝子を変異させる、が有力な原因として残る。AI は世界中の論文などを参照しているから、これが世界の医療界の新しい見解、ということになる。日本の医療界はまだそこまで到達していないのか?